呼吸器感染症について
私たちが生きていくためには、きちんと呼吸し、必要かつ適正な量の酸素を体内に取り込んでいく必要があります。ところが、空気中には様々な病原菌(ウイルスや細菌)が潜んでいることがあるため、呼吸によって外部の病原菌が侵入してくるリスクは常にあります。
病原菌が生体の防御機構をくぐり抜けて気道から体内に侵入・増殖すると、呼吸器感染症にかかってしまいます。主な症状としては、咳や痰、発熱、胸痛、呼吸困難などがあります。ウイルス性の風邪症候群などは、日常的な頻度の高い疾患であり、空気が乾燥する冬期には特に増加します。
市中肺炎
肺炎は、主に細菌やウイルスなどの病原微生物が肺に感染して炎症を引き起こす病気です。呼吸器の防御機能が病原微生物を排除できなかった場合や、病気やストレスなどのために免疫力が落ちている時など、つまり感染力が防御力を上回った場合に罹患しやすいと言われています。 このうち市中肺炎は、自宅で日常生活をしていた人に起きる肺炎です。一般的な風邪症候群でも見られる咳や淡の症状が強まったり、胸の痛み、発熱などが続いたりします。このようなときは、お早めに当院をご受診ください。
気管支喘息の治療
昭和初期頃までは非常に高い罹患率で推移していた病気であり、昭和25年までは日本の死亡原因の第1位を占めていました。その後は、効果的なお薬も開発され、患者数は一時期を除いて減少を続けています。しかし、決して過去の病というわけではなく、現在も気管支喘息を発症する方はいらっしゃいます。また、気管支喘息は周囲の人に移す感染症です。2週間以上にわたって咳や痰、微熱が続くようなら、早めに専門の医療機関を受診しましょう。
肺真菌症
カビ(真菌)などが含まれた空気を吸い込むことによって発症する病気です。原因となるカビには、アスペルギルス、クリプトコッカス、カンジダなどがありますが、健康な人の場合は、ほとんど問題はありません。しかし、免疫力が落ちていると、咳や淡、血痰、発熱、呼吸困難などの症状が出現します。中には急速に悪化するケースもありますので、早めに治療を開始することが大切です。
ウイルス性肺炎
ウイルス性の肺炎は非常に多く見られます。年齢や生活環境などによっても異なりますが、インフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、新型コロナウイルスなどが原因となります。発熱や咳などが続くだけでなく、筋肉痛や全身倦怠感などの症状もよく見られます。原因となるウイルスの中には、効果的なお薬が開発されていないものもありますが、インフルエンザなどの場合は、時期を見極めた上で抗インフルエンザ薬などを処方いたします。重症になると人工呼吸などが必要となりますので、悪化する前に受診するようにして下さい。
誤嚥性肺炎
高齢者や神経疾患がある方は誤嚥性肺炎になりやすいです。嚥下機能(飲み込みの動き)が低下しているため、本来は食道に向かうべきものが空気の通り道の気管に入り込んでしまい、肺炎を引き起こしてしまうのです。特に、寝たきり状態の方は口腔内で細菌が増殖していることも多く、知らない間に誤嚥を起こし、誤嚥性肺炎をきっかけとして生命の危機に陥るケースも少なくありません。こうしたリスクを少しでも減らすため、口腔内の状態を清潔にしたり、定期的に肺炎球菌ワクチンを接種したりすることが大切です。