内科・呼吸器内科・アレルギー科・訪問診療 ソラーレクリニック太子

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医学論文勉強まとめ

医学論文勉強まとめ

糖尿病がある方の血圧は、どこまで下げるべき?

2026.08.07

糖尿病の診療では、血糖値だけでなく、血圧を適切に管理することも大切です。高血圧を放置すると、脳卒中や心筋梗塞、心不全などのリスクが高まる可能性があります。

一方で、「血圧は低ければ低いほどよいのか」「どの程度を目標にすべきか」については、患者さんの年齢や体調、合併症によって判断が異なります。

今回は、2型糖尿病のある方を対象に、収縮期血圧、いわゆる「上の血圧」を厳格に管理する効果を調べた研究をご紹介します。

今回紹介する論文

論文名: Intensive Blood-Pressure Control in Patients with Type 2 Diabetes
著者: Bi Y, Li M, Liu Y, et al.
掲載誌: The New England Journal of Medicine
掲載年: 2025年
巻・ページ: 392巻、1155–1167ページ

論文は2024年11月16日にNEJM.orgで先行公開され、2025年3月27日発行号に掲載されています。

どのような研究だったのでしょうか?

この研究は、中国の145施設で実施された無作為化比較試験です。

対象となったのは、次の条件に当てはまる12,821人でした。

 50歳以上
 2型糖尿病がある
 収縮期血圧が高い
 心血管疾患のリスクが高い

 

参加者は、次の2つのグループに無作為に分けられました。

厳格治療群: 収縮期血圧120mmHg未満を目標
標準治療群: 収縮期血圧140mmHg未満を目標

 

主な評価項目は、脳卒中、心筋梗塞、心不全による治療・入院、心血管疾患による死亡を合わせたものです。

研究の結果

研究開始1年後の平均収縮期血圧は、厳格治療群で121.6mmHg、標準治療群で133.2mmHgでした。

追跡期間の中央値は4.2年で、主要な心血管イベントは次のように発生しました。

厳格治療群:393人
標準治療群:492人

厳格治療群では、主要な心血管イベントの発生リスクが標準治療群より低く、ハザード比は0.79でした。これは、研究期間中の相対的なリスクが約21%低かったことを示します。

ただし、「すべての患者さんが血圧120mmHg未満を目指せばよい」という意味ではありません。

注意すべき副作用もありました

重篤な有害事象の発生率は、2つのグループで大きな差はありませんでした。

一方、厳格治療群では、症状を伴う低血圧と高カリウム血症が標準治療群より多く認められました。

血圧を下げすぎると、人によっては次のような症状が現れることがあります。

 立ちくらみ
 めまい
 ふらつき
 強い倦怠感

降圧薬の種類によっては、腎機能や血液中のカリウム値にも注意が必要です。そのため、血圧の目標値は検査結果や体調を確認しながら個別に決める必要があります。

この研究から分かること

この研究では、心血管疾患のリスクが高い2型糖尿病患者さんにおいて、収縮期血圧120mmHg未満を目標とする治療が、140mmHg未満を目標とする治療よりも心血管イベントを減らしました。

ただし、研究結果を日常診療に当てはめる際には注意が必要です。

この研究は中国人の患者さんを対象としているため、日本を含む他の集団に同じ結果がそのまま当てはまるかは、今後も検討が必要です。また、120mmHg未満という目標を達成できた厳格治療群の患者さんは約60%だったとの指摘もあります。

さらに、120mmHg未満と130mmHg未満を直接比較した試験ではありません。そのため、「120mmHg未満が、現在よく用いられる120~129mmHg程度の目標より優れている」とまでは判断できません。

血圧の目標は一人ひとり異なります

血圧の目標値を考える際には、次のような点を総合的に確認します。

年齢
自宅と診察室での血圧
心臓病や脳卒中の既往
腎機能
尿たんぱくの有無
立ちくらみや転倒のリスク
現在使用している薬
全身状態や生活状況

ご自身の判断で降圧薬を増減したり、中止したりすることは避けてください。家庭血圧の記録がある場合は、受診時にお持ちいただくと治療方針を検討する際の参考になります。

ソラーレクリニック太子では、糖尿病や高血圧などの生活習慣病について、検査結果や体調を確認しながら診療を行っています。血圧が高い、家庭血圧が安定しない、薬を飲むとふらつくなど、気になる症状がある方はご相談ください。

参考文献
Bi Y, Li M, Liu Y, et al. Intensive Blood-Pressure Control in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2025;392:1155-1167. doi:10.1056/NEJMoa2412006.
Anand S, Beddhu S. BPROAD — End of the Road for Debate on Systolic Blood-Pressure Goals in Type 2 Diabetes? N Engl J Med. 2025;392:1230-1232. doi:10.1056/NEJMe2501656.

※本記事は医学論文の内容を一般向けに紹介するもので、個別の診断や治療方針を示すものではありません。治療内容や目標血圧については、主治医にご相談ください。

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